会長挨拶
第22回日本頭蓋底外科学会 会長:清川兼輔

この度、第22回日本頭蓋底外科学会を来年(2010年)7月15日、16日に久留米にて開催させていただきますこと教室員一同大変光栄に存じております。

私個人としては、頭頸部・頭蓋底再建を自分のライフワークとしてやって参りました。初めてシンポジウムを担当させていただいたのも本学会であり、また頭蓋底再建における多くの業績が私の教授就任の原動力となったことも間違いありません。このため、本学会は私を始め教室員にとって非常に重要な学会であり、その学会を私どもの教室で主催させていただくことはこの上ない喜びであります。このような栄誉を与えていただきましたことを、会員の皆様一同にこの場をお借りして深くに感謝申し上げます。

さて、久留米大学病院での頭蓋底手術の第一歩は、1984年5月に耳鼻咽喉科、脳神経外科、形成外科の3科が初めてチームを組み、前頭洞癌の一塊切除一期的再建という本格的な頭蓋底手術を行ったことから始まりました。その第1例目の患者さんは、手術と治療が成功しその後15年近く生存され、今でも私にとって思い出深い患者さんの一人です。当初はまだまだ講座の壁が高い時代でしたが、当時耳鼻咽喉科学教室の教授であられた平野実先生の強いリーダーシップのもとチーム医療による手術が遂行されました。当時脳神経外科の助教授であられた重森稔先生(現教授)ならびに当教室の初代教授田井良明先生の3人が同時に手洗いをされて一つの手術が行われていた光景をいまだに忘れません。その時平野実先生(現石橋美術館館長)は、「一つの科では不可能なことでも、複数の科がチームを組むことによって可能となるんだ。それが真のチーム医療だ。」とおっしゃっていました。その言葉は今でも私の再建外科医としての原点です。そこで、今回の特別講演には平野実先生にチーム医療の理念と重要性についてご講演いただこうと考えております。今後チーム医療は、様々な医療の分野において不可欠なものとなるはずです。多くの先生方特に若い先生方にチーム医療の何たるかが強く伝われば本望に存じます。

また、もう一方の特別講演としては、久留米大学免疫・免疫治療学講座ならびに先端癌治療研究センターがんワクチン部門の教授であられる伊東恭悟先生に「悪性腫瘍に対するワクチン療法の現況と展望(仮題)」についてご講演いただく予定です。このワクチン療法も将来チーム医療の一員として必要不可欠な存在になると考えています。 

私ども形成外科医が本学会を主催させていただく上で、シンポジウムについては脳神経外科や耳鼻咽喉科の先生方と共通に興味のある分野にしたいと考えています。この視点から、外傷や先天異常に対する頭蓋底外科、中枢性顔面神経麻痺の治療、頭蓋底術後の整容的再建(ペースト状人工骨)などを取り上げる予定です。当然、長年取り上げられてきたアプローチ法、腫瘍切除およびその長期経過につきしてもパネルや主題演題として取り上げる予定です。

今回の学会は、頭蓋底を中心とした脳神経外科と耳鼻咽喉科とのチーム医療において、私ども形成外科がどれだけお役に立てるかをアピールできるよい機会と考えております。私どもとのチーム医療によって先生方の手術の精度が上がり整容的にもより満足できる結果を残すことができるよう来年の学会に向けて更なる努力を重ねてゆきたいと思います。

学会を開催する7月中旬はまだ梅雨時期で、近年の異常な程の大雨が少し心配です。しかしながら多数の先生方に久留米の地に足をお運びいただき、学会だけでなく石橋(ブリジストン)美術館の名画や豊かな自然にふれていただければ幸甚です。御来久を心よりお待ち申し上げます。


第22回日本頭蓋底外科学会

会長 清川 兼輔

(久留米大学医学部形成外科・顎顔面外科学講座 主任教授)